狼と森の番人 ...05
エルフィンは人の言葉で、少しずつ話した。
セイジが町へ行っている間に、人間が訪ねてきたこと。その人間が願いを叶えてくれると言ったこと。
ついて行った先で、渡された果実を食べたこと。
体が熱くなって、気を失ってしまったこと。気付いたら、この体になっていたこと。
そして、願いが今叶うということ。
その願いをカップに注いで差し出すと、エルフィンは輝くような笑顔を見せた。
セイジも隣に座り、二人で暖炉に向かって、スープを飲んだ。
嘘みたいにあたたかで、静かな時間だった。
その日はエルフィンを抱きしめたまま眠った。
狭いベッドから落ちないよう、背中から抱きしめていた。
目が覚めると、エルフィンはいつものようにセイジよりも先に起きていて、伏せた体を少し起こしていた。
「おはよう」
呼びかけると、ひととき、こちらを振り返る。金色の瞳が、暖炉の火を受けて燃えるように輝いた。
また、白い凛々しい狼の彼が、そばにいる。
朝食を準備して、聞いてみた。
「君も飲むかい?」
満足そうに、穏やかに、尻尾が揺れた。
- 2018.03.13