狼と森の番人 ...epilogue

 セイジを膝に乗せ、その頭を撫でながら、ずっとずっと、ずっとずっと昔、祖父が話してくれた。おとぎ話のような、言い伝えのような、絵のない絵本のような。

 森は遠い昔、ひとりの人間であったという。
 その人間は、誰かに深く愛されていた。誰かは人間に寄り添うように生きていた。その人が大好きで、とてもとても大切だった。
 人間と誰かはいつしかひとつになった。とけて、混ざり合い、森になった。
 ひとつになって、人間と誰かは、お互いのことを忘れてしまった。しかし、深い愛を覚えていた。それが自分の外から与えられたものだということも、覚えていた。

 スープのようだなと、今、ぼんやり思う。

- 2018.03.13
inserted by FC2 system